大川家具2社の工場を訪れて感じたこと|木材選定から始まる「柾目」を軸にしたものづくり
大川は「家具の街」と言われますが、実際に工場を回っていると、いつも思うことがあります。
同じ大川でも、工場ごとにものづくりの基準はまったく違う
今回見せていただいた工場も、「ここは、こういう考え方で家具を作っているんだな」と腑に落ちる話がたくさんありました。
まずは、桐箪笥を中心に製造されている「株式会社和光」さんへ
家具の安定性は、加工技術よりも「木の選び方」で決まる
最初に話題になったのは、木材選定の考え方でした。
家具というと、デザインや仕上げのきれいさ、価格に目が行きがちですが、和光さんの話を聞いていて強く感じたのは、
家具の良し悪しは、どの木を選ぶかでほぼ決まる
という考え方です。
- 木密が高く、品質の安定した木材を使うこと
- 見た目が派手でも、後から暴れやすい木は避けること
- 桐材についても、軽さや価格ではなく品質を重視すること
どれも地味ですが、「長く使う家具」を前提にすると、とてもまっとうな基準だと感じました。
板目と柾目|“きれい”と“安定”は別の価値
木目についての説明も、とても印象的でした。木材には大きく分けて板目(いため)と柾目(まさめ)があります。
板目(いため)の特徴
- 木目がダイナミックで、見た目がきれい
- 年輪に沿って挽かれるため、木目が横方向に出る
- その分、ねじれが出やすく、木が暴れやすい
柾目(まさめ)の特徴
- 年輪に対して直角に挽かれる
- 木目がまっすぐ通り、木が暴れにくい
- 長期使用に向いた、安定性の高い材
和光さんでは、製作においては柾目材を中心に使うという判断をされています。
もちろん、熟練した職人であれば、板目材のねじれを後から正すこともできるそうです。ただ、それは「技術でカバーする」やり方。
和光さんの場合は、
そもそも、暴れにくい木を選ぶ
という考え方が、ものづくりの前提にあるように感じました。
日本文化を「収納の中」にそのまま入れるという発想
工場で見せていただいた中で、個人的にとても印象に残ったのが、日本文化を取り入れた収納ボックス(BOTAN)です。

【幅51.2 奥行35 高さ70】高級総桐飾り箪笥 牡丹(BOTAN)
正直なところ、量産には向きませんし、作るのも大変です。それでもこの形を選ぶ理由が、話を聞くうちに少しずつ分かってきました。
- 内部は、昔の日本を思わせる佇まい
- 首と脚の構造を持つ伝統的な設計
- 日本文化の象徴である竹の使用
- 引き出しの中に敷かれた御座(ゴザ)
この御座は、8年以上経っても香りが残り、色も大きく変わっていないそうです。
紫外線を抑え、通気性を保つ構造にすることで、中のものを「密閉しすぎない」。これは、日本の高温多湿な住環境で長く培われてきた知恵そのものだと感じました。

「隠す」のではなく「気づかせない」という日本的セキュリティ
引き出し裏に設けられた、一見して分からない構造の話も印象的でした。
近くで見ても、注意深く見ないと気づかない。これは単なる防犯というより、
相手の理解を前提にしない
という、日本独特の考え方だと思います。
昔の日本で、貴重品(核)を守るために使われてきた技術が、現代の家具の中にも自然に残っている。そんな話を聞いて、「日本の家具らしさって、こういうところだよな」と思いました。
2件目の工場は、無垢材のテーブルを中心に作られている「アールテック有限会社」さん

こちらでは工場内でインタビューさせていただいたので、
家具制作の音が大きく私では内容は聞き取れなかったのですが、
後日インタビューした越境ECの会社さんが内容をアップしてくれると思います。

同じ大川でも、基準は本当にバラバラ
今回あらためて感じたのは、
「大川家具」という言葉だけでは、何も分からない
ということです。
株式会社和光さんには、木材選定の基準があり、柾目を中心に使う明確な理由があり、日本文化を構造に落とし込む思想があります。
これは、大川のすべての工場に当てはまる話ではありません。だからこそ、
どの工場が、どんな基準で作っているのか
そこまで知った上で家具を見ると、見え方が大きく変わってくると思います。
工場を出る頃には、「海外の人が、わざわざ日本の家具を選ぶ理由」が少し言葉にできるようになった気がしました。
派手さではなく、効率でもなく、基準の積み重ね。今回訪れた2社さんのものづくりは、そんな言葉が一番しっくりくる現場でした。

これからますます大川の家具の良さを海外に知らしめようと決起大会をしました。

【この記事を書いた人】
堤太陽(Taiyo Tsutsumi)
株式会社大川家具ドットコム代表取締役社長。宅地建物取引士
家具の町、福岡県大川市で生まれ育ち、新卒と同時に北九州市のマンション業者に就職。2003年に改正建築基準法によりシックハウス症候群への対処が求められ低ホルムアルデヒド建材の重要性を感じた。 2005年退職後4か月のヨーロッパ放浪。2006年より家業である家具卸を手伝っているうちに、大川市の基幹産業である家具製造の未来に危機感を感じ、「大川を再び家具で盛り上がる街にしたい」
という思いから、2006年に大川家具ドットコムというネットショップを立ち上げ、 大川家具を全世界に広げたいと模索中。
2019年 経営革新認定
2021年 JETROの越境EC「Amazon.com Japan Store」採択
2022年 「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業」補助金採択
2023年 越境EC用英語サイト「https://shop.okawakagu.com/」開設
2024年 創立10周年式典開催・越境EC向けに世界へボカン株式会社と提携






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